「まあ…それでは、三成家が衰退してしまうのではないでしょうか? 花蓮なら一矢様を全面的に支え、今後ご活躍される一矢様のバックボーンとなることが出来ますのに」
庶民ですみませんね、って言いたいわぁ…。
「花蓮、色々考えてくれてありがとう。しかしもう決めたことだ。家庭を持つ以上は、必ず自身の会社を大きくし、成功させる努力を惜しまない。しかし三条家の助けも必要だ。今後とも変わらず懇意にして欲しい。どうか、よろしく頼む」
「一矢様…」
花蓮さんは目に涙を浮かべて、一矢を見つめた。「花蓮は、ずっと…幼い頃から、一矢様をお慕いしておりました」
あぁ…ごめんなさい…。あなたも一矢がほんとうに好きなのね。
それなのに、偽装でごめんなさい。ニセだから胸が痛んだ。
「花蓮の気持ちは嬉しいが、それは私が兄の様に接していたから、憧れに近いものがあったのだろう。お前は私にとって妹みたいな存在であったから、つい、兄の様に振舞ってしまったことは侘びよう。すまなかった。でも、花蓮は素晴らしいレディ―だ。私なんかよりも、もっとお前に相応しく素晴らしい男性に出会えるはずだ。見分を広めるといい。籠の中の鳥である必要は無い」
はあー。普段の一矢とはぜんぜん違う。
こんな一面もあるのね。すごく饒舌だわ。世間を渡り歩かなくてはいけないのだから、このくらいは朝飯前なのね。
ご令嬢を深く傷つけないように、しっかりとお断りするそのスマートさ。天晴よ。
「解りました。一矢様のご結婚、祝福させていただきます。どうか、お幸せに」
花蓮さんが微笑んだ。本物の花の様に美しい。一矢によく似合っている。下品な私よりもずっと、お似合いだ。ニセ嫁を語って申し訳ない。
「一矢様、わたくし、伊織様とお話してみたいわ。よろしくて?」
ご令嬢の目が鋭く光った。
ちょっと待って。これ…嫌な予感しか無いんだけど…。
「伊織、どうだ? 花蓮と少し話してくれるか?」
「はい、喜んで」
嫌とは言えずに微笑んだ。
「花蓮のお部屋にいらして、伊織様。一矢様との思い出の写真が沢山ありますの。アルバム見ながらお喋りしましょう」
いーやーあー。
心の叫びとは裏腹に、速攻で部屋を連れ出されてしまった。跡が残るくらい強い力で腕を掴まれた。ゴテゴテのネイルを施した鋭い爪を立てられる。痛い…。
さあ、ご令嬢との対決――どうなる!?
「こちら